「お前が僕を蹴ることにより、以下の弊害が起こる可能性がある」
 そうだ。このままでは、僕は壊れてしまう。素直になればいいんだ。……もう溜め込まない、相手にはっきりと自分の気持ちを伝えるんだ。
「な、なんだよ、その弊害って」
「先ず、僕自身が傷つく。身体的な面だけでなく、精神面も著しく傷つけられてしまう」
 彼が僕に手を上げるたびに、体の痛みだけでなく、心にも鋭い痛みが走る。それが何故なのか、今まで無視していたのは他でもない、僕だった。
「それを狙ってやってんだから、あたりめーだ」
「……」
 言わなければいけない、今この場で。今言わないと、一生後悔することになると、自身の全てが訴えてくる。
「なに黙ってんだよ? 久々に口を開いたと思ったら、んな分かりきったことを」
「――好きなんだ。君のことが」
 予想通り、クラス中が騒がしさで包まれていたというのに、一瞬で静まり返る。
 彼……いや、彼女はというと、まるで何を言われたのか理解していないような顔をしている。……そう、僕は彼女のことが好きだった。最初にクラス替えをして一目見た瞬間から。……その後いじめられ始めてもその気持ちは変わることがなく。
「な、なななな何言ってんだお、おま、お前!」
「何も。僕は君のことが好きだといったんだ。何度でも言う、好きだ」
「う、うるせー! 何度も言うなこのうじ虫がー!」
 顔を真っ赤にして、彼女が暴れまくっている。その内、生徒の中で冷やかす奴が現れ、次第にそれは広がってゆく。
「いやね、俺はそうだと思ってた」
「好きな娘には、ちょっかい出しちゃうって言うしね。これじゃ逆だけど」
「いよっ、お熱いねーお二人さん」
 もう何が何だか収拾がつかなくなりそうな時に、急に腕をつかまれる。
「外出るぞ!」
 わけが分からないうちに、気づいたら屋上に立っていた。僕と、彼女の二人が。
「そ、その、な……お前がそこまで言うなら、付き合ってやってもいいぞ」
「あぁ、そういうと思った」
「んな――!?」
「今日は、一緒に帰ろうか」
  ――夕焼けを背にして、彼女は満面の笑みを浮かべながら頷いた。



三番(これ)を最初に選んだ人は、おめでとうございます。一応のハッピーエンドです。
しかし、現実はこうもうまくいきません。現実を見ましょう。
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