やれやれ、僕もここで消える運命……そうだね、どうやらそのように決まっていたらしい。――彼女、杉林心が俺の胸に掌をそっと差し伸べる。
 よもやこの秘匿世界の外にある僕まで、“ファクター”としての役割を持たされていたとはね。完敗だよ……。

「……僕の負けだよ。その前に、一つ聞いていいかい? ――武田智和は“消された”はずなのに、どうしてまだ活動しているんだ?」
「消された……そう、そういうこと。“彼女”ったら、そんなことをして困ったものね。――ありがとう。本堂恵はこれで消えるのに、貴重な情報までくれるなんてね」

 どういうことだ? ログによれば、武田智和は彼女に一度消されている。……それを知らない、ありえないな。
 まぁ、僕にはもうどうしようもないわけだけどね。神経まで共有してしまっているんだ。ダイレクトにデリートされた場合、プレイヤーは最悪死に至る。
 彼女の掌に力がこもる。同時に、淡い青色の光をまとった球体が掌の上に浮かび上がる。……デリートコマンド。

「そうね、情報をくれた御礼に、こちらも一つだけ教えてあげるわ。さっき、“どうして人間を消す”と聞いたわよね? それはね、最終目標が“武田智和”だからよ。……じゃあね」

 そうか、それで佐藤啓太を……。
 くっ、消去が始まったようだな……。
 出来れば、武田智和、お前は……。

「――や、やめろ!」

 まるで願いが届いたかのように、武田智和が、立っていた。

 

『ラストダンスへ』

 

「実は俺、何もかも全部知っているんだ!! ついでに、本堂は死んだフリだ!!!11」
「マジで! 俺死んでないの!?」
「ふふっ、私もなんだかんだとミステリアスな雰囲気を発しつつも、後ろから両乳首こねくりされるとデリートされてしまうわ!! ――あっ、らめえええええ!!11!」
「やった! 勝った!!!!」


 こうして、秘匿世界とホライゾンサーバーから成る擬似並行世界の均衡は保たれた! それも全て勇者、武田智和のお陰である! 


 完

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